2014年12月18日木曜日

最近思うこと

  自然と向き合って
       渡辺皓司(画家、東京革新懇世話人)
 去る1122日長野県北部を震度6弱の地震が襲った。白馬村、小谷あたりは「塩の道」が通じ、春は田植え前の水面に映る、雪の白馬岳の美しい姿を想い出す。四季折々何度か歩いた道である。この美しい村を襲った大地震に胸が痛むが、崩れた家がありながら死者がなかったことに、ほっとする。
  自然は有難い恵みをあたえてくれるが、人間が抗することができぬ大きな力が災害も引起こす。「311」の大地震と巨大津波、近くは御嶽山の噴火があった。人間は自然には勝てないという確かな実感として人間に知らしめ、科学の力で自然を征服できると考える人間の思いあがりに、警告を発しているのではないか。福島の原発事故がそうだ。科学技術の力で地上に太陽をつくるなど身の程知らずの愚行ではないか。物質中心の経済成長、命よりカネ優先。今も汚染水流出、土地の除染もままならず、故郷を追われた被災者は家にも帰れない。原発再稼働など考えるだけでも罪深い。川内原発だけでなく総ての原発ゼロがよい。

 こうした物質中心の経済成長の陰で地球温暖化が進行したことは今や常識になっている。ここ数年の猛暑、豪雨、龍巻など尋常でない気象異常は日本だけでなく、世界に広がっている。水害、干ばつ、地球両極の氷解など自然界のバランスとリズムが崩れ、生態系まで狂わせている。熱帯魚の北上や蝶の空間移動は温暖化のバロメーターといわれる。

 こんな現代を私は、生き物の受難時代とイメージして絵を描いている。地球は究極の破滅まで行くのか、その不安も内包する。自然を畏敬し共生した古代の人々の心を引継ぎ、現代にどう生かして造形化したらよいか、大きな課題だ。だが現実の美しい地球をそっくりそのまま守ることが何より大事だ。これほど確かなことはない。

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