9条に護られてきた「不殺生戒」
(隅田山多聞寺山主、
東京革新懇世話人)
ホトケの教えとは、「悪いことをしない。善いことをしなさい。心を清らかにしなさい。」(ダンマ・パーダ183)これだけ。だが、それができていれば、この世は極楽浄土になっているはずですが。悪いことは安易で快感。善いことは困難で苦しい。自浄努力はなおさら辛い。只でさえ惡に走りやすい私たちを辛うじて押し止めているのが良識とか優しさなどの人間らしさでしょう。
しかし、殺人・盗み・レイプ・嘘・二枚舌・悪口・綺語・貪欲・怒り(報復)・邪見(誤ったものの見方考え方)という十惡の限りを尽くすのが戦争です。ことに最後の三つ貪欲・瞋恚・邪見は人間の心を汚す三毒と言われます。最終的に殺し殺される行為を正当化させるためには、人心をこれらの毒で冒すことから始められます。敵愾心・ヘイトスピーチの煽動や利益の飽くなき追求など、優しさや思いやりという人間らしさを奪うことが不可欠です。そのために、十惡強制への諸法制が進められている今です。
かつて、日本の仏教者の多くは「聖戦」に協力し不殺生を破戒しました。先代住職であった父も、「大政翼賛会」会員でした。敗戦後から現在に至るまで、日本の仏教者が直接に十惡(戦争)の大罪を犯すことなくこられたのは、他ならぬ日本国憲法第9条という世俗(社会)の法があったことによります。日本の仏教者は仏教徒としての持戒を憲法9条によって護られて来たのです。
国民の生命と財産、さらには不殺生戒を護持してきた憲法9条を、「惡を行い、善を退け、心を汚そう」という無明の企みへの光明として増進させていきたいものです。
0 件のコメント:
コメントを投稿