2012年7月19日木曜日


石原知事の尖閣購入計画と日中友好の道
真の友好の道は、
双方の指導者の品位と見識次第

中江 要介さん
  (元中国大使)
<石原都知事が尖閣諸島を東京として購入することを表明し、大きな政治的・社会的問題なっています。石原都知事は、国会の参考人として招致されたとき、「(中国側は)お前の家に強盗に入るぞと宣言したんだよ。この戸締まりをしない国というのは、間が抜けていると思いますなあ」と発言し、更に日本の丹羽駐中国大使が購入計画を「日中関係に重大な危機をもたらす」とコメントしたことを論(あげつら)って「もう少し自分の国のことを勉強して物を言え、じゃないと大使の資格はない」と罵りました。 
そこで、元駐中国大使の中江要介先生に、真の日中友好の道について、原稿を寄せていただきました。>

石原都知事の発言について、私の所見を求められましたので、以下に申し述べます。
第一は、石原都知事の人柄の問題です。私個人としては冒頭にあるような遣り取りから受ける印象としては、知事の人柄が頗る品位を欠いており、一日本人として甚だ残念に思います。芥川賞を受賞した作家で東京都知事に選出されたほどの人がこのような粗暴な言葉遣いで相手を誹謗する発言は通例の日本人にとっては大変耳障りです。
第二は、石原知事の某所における記者会見での発言(サンケイ筋によるネット情報)の中に丹羽駐中国大使のことを「だいたいだな、伊藤忠の社長ごときものをだね、そんなものをね、この日中関係のこういう大事な時に、大使として送る方が間違っている。尖閣の問題があった時に、例の衝突事件のときかな、真夜中に何度も呼び出され、そのたびに『はいはい』と夜中の三時に相手の外務省はなんのつもりか知らないが、出ていくのはばかだよ。おれは寝てるからって、日が変わってからにしろって言ったらいい。失敬千万だ、奴隷のごとく使われて。まあ、そんなもんだな、日本の外交官というのは」というくだりがありますが、このような発言からも石原知事という人がいかに品位を欠いた人物かが分かると思います。
第三は、「9・10日から尖閣に都の職員が行くということだが―」との問に対しては「あれ行きません。やめさせました。行くときはちゃんと東京都の船で行きますから」との答えなので「やめさせた理由は」との質問に対しては「政治色の強いグループということで自粛したというのかな、止めたようですよ」との答えなので「9・10日は今までで一番大規模で、国会議員6人と都議も参加するということだが」と更に質すと、「いいことじゃないですか。上陸してみたらいい。いかに峻険な島で、ある連中が苦労して志で灯台を建ててくれた。その灯台を外務省の腰ぬけがシナにおもんばかって、時期尚早と言って20年近くチャートに載せていなかった。こんなばかなことをする国はないね。あそこを航行する人間にとって生命の危険がかかわる、と言ったのに外務省は知らぬ顔をして、特にシナに憚(ハバ)かって時期尚早といってまた、歴代自民党もそれに従って来た。私はそういう自民党に我慢ならない。今の政府もよくないけどね。あそこを航行する日本人、シナ人、台湾人、朝鮮人沢山いるだろう。そういう船に乗っている人間の生命の安危を保証するのは、国家としての責任じゃないですか。それを果たせないで折角できたものをチャートに載せないことは却って危険なんですよ。そういうばかなことを延々とやって来た。云々・・・・」 
日中正常化40周年、真の友好の道を堂々と歩んでほしい
右に述べた三点を読み返しただけでも、「反面教師」として“真の日中友好の道”が那辺にあるかがわかるように思います。今年は石原知事自身も述べているように、日中正常化40周年という節目の年で、日中関係の大事な時に当たるのですが、最近帝国ホテルでの講演で、現在の中国の程永華駐日大使は、日中双方共どのような問題が起ころうとも、相手を唆(そそのか)したり、敵視して攻撃したりするようなことは極力避けることが賢明だと思うと述べていましたが、私も真の日中友好の道は、日中双方の指導者の品位と見識次第である、と考えます。私は、石原知事が礼儀正しく徳を備えた指導者として、傲慢を避け謙虚を忘れず、真の日中友好の道を踏み外すことなく堂々と歩んでほしいものと思います。(了)

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