虎視眈々と市場拡大を狙う軍事産業
嘉悦大学前学長
東京革新懇代表世話人
2015年度予算の概算要求が出そろった。その中で突出しているのが防衛省予算である。防衛予算は第2次安倍内閣から増額へと転換し、ついに来年度は5兆円超の規模に膨らむという。概算要求の中にはオスプレイ5機、P1哨戒機20機などが含まれている。また国産戦闘機のためのエンジン開発も政府は検討しており、何とも恐ろしい事態を迎えている。まさに「戦争する国」の準備そのものである。
ストックホルム国際平和研究所『2010年版年報』によると、武器製造や軍事サービスの売上高は上位100社で約4,110億ドル(32兆8,800億円)である。また売り上げ上位10社には、アメリカ系企業が7社あり、「戦争する国」を象徴しているようである。ちなみに第1位はロッキード・マーテイン社で、兵器売上高は約36億ドル(3兆円)の巨額に達している。かかる中で日本の軍事産業の地位は、三菱重工が25位の2,368億円を筆頭に、IHIグループ(57位)、三菱電機(64位)、川崎重工(68位)、NEC(70位)である。
そこで防衛省では、関連する企業を研究メンバーとして加えた「防衛生産・技術基盤研究会」(2010.12~14.6)を立ち上げ、この6月に最終報告書を完成させている。この研究会の目的を、①国内に保持すべき分野を確定して、その維持・育成を図ること、②防衛企業の収益リスクを抑制し、長期的観点から投資・研究開発・人材育成に寄与することと設定し、同盟国などと高い相互関連にある兵器などはこれらの国からの輸入や国際共同開発・共同生産を積極的に進めるという方向性を定めている。まさに防衛省と軍事企業との「WIN-WIN」関係の構築である。
「美しい国」の裏面には、醜くて恐ろしい「戦争する国」がより具体的に準備されている。軍事産業は市場拡大を虎視眈々と狙っている。