2013年9月8日日曜日

最近思うこと
            宮本和郎 日本画家
        みやもとかずろう

自然を描く 
 恐るべきことに日本の国はいま、生きるために文化・芸術を必要としない、人を危めることを厭わない人間造りが急速に押し進められています。
 私も係わっている上野・都美術館での平和美術展が無事終わりました。異常気象の連続でしたが年配の方や小中学生などを含めて、入場者は昨年の第60回記念展に比べて約千人増(1.25倍)の賑わいとなりました。不安の多い世の中だからこそ人びとは文化・芸術を求めている、平和を求めている、平和美術展の必要性と意義を理解していることの現れであると痛感させられました。豊かな心と人間性を育むための芸術の果たす役割は一段と大きなものとなる。そのことは平和な社会へと連なってゆく。
 ヨーロッパの具象絵画は一般に人物、風景、静物画と分類されて発展してきましたが、日本画(東洋画)には西洋のものとは異なる表現様式に花鳥画と呼ぶ分野があります。おしなべて生物は、生まれ、生きて、子孫を残し、死んでゆく。植物のさまざまに輝いて生きる瞬間を花と呼び、それらに群がる小動物たちの姿を鳥と呼んで人間が一体化を図ろうとする作画姿勢です。それは特に日本人の中に永く培われてきた自然観であり、自然愛の形だと思います。
 自然界は弱肉強食の食物連鎖と共存、共生、住み分けとのバランスで成り立っている、とダーウィンは説き明かしました。地球上の一生物である人間の求めてきた豊かさとは何だったのだろう。地球上の全てを我が物とみなして弱肉強食を追い求め、人間同士の殺し合い(戦争)までして自然を破壊し、バランスを崩してきました。 
人間は云うにおよばず、この地球上のすべての「いのち」を大切にしよう‥‥‥。私はそんなことを思いつつ、花を中心とした自然を描き、平和美術展にも出品してきました。